認知行動療法の豆知識
まず始めに
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy : CBT)とは、
人の考え方(認知)や行動に働きかけ、気分を楽にする心理療法です。
- 欧米では一部の精神障害の治療において、まず選択されるべき治療法として位置づけられています。
- 薬物療法と比較しても同程度の効果が見られる事が明らかになっています。
CBTの成り立ち
「認知療法」と「行動療法」の、2つの流れが存在します。
- 「行動上の問題」に焦点を当て、それらは「誤った行動を学習している」、もしくは「まだ適切な行動を学習していない」ために生じていると捉え、行動を変化させたり、新しい行動を獲得したりする事によって、問題を解決していく治療法です。
- 問題を引き起こしている要因として、“物の考え方や捉え方(認知)が大きく影響をしている“といった視点で捉え、問題に対して多角的な視点を持ってもらうことによって、問題を解決していく治療法です。
行動療法の発展
- 対象領域や治療対象の拡大、より様々な技法の開発され、大きな発展をとげる
- 学習は観察のみによっても成立する事が明らかになる
- 認知のプロセスが行動の媒介機能となっている事が説明され、認知行動療法への発展していく契機となる
認知療法の発展
- EllisやBeckらによって「認知のプロセス」に焦点をあてた理論が構築された
- 認知治療の中では行動的な技法も用いられた
認知行動療法への発展
- 行動療法の中で、「認知的プロセス」が取り扱われるようになる
- 認知療法の中で、「行動療法的技法」が用いられるようになる
↓
両者はお互いの良い部分を取り込み、
1980年代以降大きく世界的に発展を遂げてきた
どのような治療法なのか
認知行動療法は、一般的に以下のように定義されます
個人の行動と認知の問題に焦点を当て、そこに含まれる行動上の問題、認知の問題、感情や情緒の問題、身体の問題そして動機づけの問題を合理的に解決するために計画された構造化された治療法であり、自己理解に基づく問題解決とセルフ・コントロールに向けた教授学習のプロセスである(坂野, 1995)
CBTの特徴
- 問題を、環境・行動・認知・情緒・身体などから多面的に理解する
- 特定の症状似合わせて、治療パッケージが組まれており、その有効性が明らかになっている
- Evidence-basedを重視しており、様々な技法の効果検討が積極的に行われている
- 自分一人でも学べるように、構造化されており、書籍やインターネットコンテンツを使用し学習することも可能である
- 様々なコンテンツが普及しつつあり、効果の検討が行われている
その中でも最も大きな特徴が、
最終的には自分で自分をコントロールできるようになるという事です。
- この事を例える比喩として、認知行動療法では以下のような話
- 一人の青年が魚釣りにでかけました。彼は大きな魚を釣り、家に帰ろうと道を歩いていました。すると、道ばたで一人の老人がおなかを空かせて倒れており、青年が声をかけると老人は「もう3日も何も食べていない」と言いました。
もしこの青年が認知行動療法的な援助をすると?
- 若者はこういいました。「おじいさん、私の釣り竿をあげましょう。この辺は餌になるミミズにも豊富なので、柔らかい土を掘るとすぐに見つかりますよ。一緒に探しましょう。」そういうと、青年は老人と一緒に近くの畑を掘って、ミミズを見つけました。
- すると若者は「今度は川へ行きましょう」といって、老人を連れて川へやってきました。「おじいさん、餌を針にさして垂らしてみて下さい。糸を垂らす場所は、少しくぼんだ所がいいでしょう。ここなんかいいと思いますよ。」といって、川へ針を投げ込んだ。
- すると少し待つと、一匹の魚が釣れました。「おじいさん、こうすると魚がつれます。この方法を知っていれば、これからも困らなくてすみますよ」
認知行動療法では、
「現在直面している問題だけではなく、この先同じような問題が起きたときに、
その人自身が自分をコントロールできるよう、その問題解決の方法を身につけてもらう」
という事を大事にします。
この視点は、今までの心理療法と大きく異なっている点で、
認知行動療法最も大きな特徴と言えます。
代表的な技法
代表的な技法の例
- 問題解決訓練
- ストレス免疫訓練
- 対処スキルの獲得
- セルフモニタリング
- 自己教示訓練
- 社会的スキル訓練
- 認知再構成法(例:コラム法)
- 行動活性化
- エクスポージャー(脅威場面への暴露)
これら以外の技法でも、その効果が検討されており、有効性が確認されています
引用文献
坂野雄二 (1995) 認知行動療法 日本評論社